ライブレポート
没後20年、hideの遺志とスピリッツがお台場に降臨する――。hideへの想い、信頼、そして愛とリスペクトに溢れたミュージシャンが集結した、hide 20th memorial SUPER LIVE「SPIRITS」初日。雲ひとつない快晴に恵まれたお台場には、ピンクやイエローを身に着けたカラフルなhideファンが朝から多く集い、会場周辺には開場前からお祭りムードが充満。心地よい海風に吹かれながら、イエローハートの入場ゲートをくぐると、出演者の写真が並ぶ本イベントの大型の幕にテンションが上がる。抜けるような青空の下、前方にはお台場の街並みやゆりかもめや観覧車が見え、後方には東京湾が広がる絶好のロケーションに恵まれた会場。様々な箇所にhideの等身大パネルが設置されていたり、hideの愛車である“くじら”と呼ばれるキャデラック、デイムラー・ダブルシックスが飾られていたりと、hideづくしの会場は記念写真を撮るファンで大賑わい! 観客の期待が大いに高まる中、オープニングを飾る、MUCCのステージで2日間に渡るお祭り騒ぎが幕を開ける。
hide 20th memorial SUPER LIVE「SPIRITS」
「快晴だ! 最高だ! 雲の上からもよく見えるだろうよ」と逹瑯(Vo)が空に向かって叫び始まった、MUCCのステージ。「今日はアンタらじゃなくて、hideさんにライブ見せつけに来ました」と微笑み、1曲目からキラーチューンである「蘭鋳」を投下。「会いに来たんでしょ? 俺も一緒だよ。全員で高く飛んでけよ!」とオーディエンスを煽ると、会場中が高いジャンプを合わせる。ミヤ(Gt)のギタープレイにX JAPANの影響を感じる「KILLEЯ」、未発表の新曲「TIMER」と気合い十分なステージでオーディエンスを牽引し、トップバッターとしての役割をしっかり果たしたMUCC。「せっかくだから、カバーをやらせていただきます。さんざん悩んだ結果、この曲になりました」と、hide作詞作曲によるX JAPAN「SCARS」のカバーも披露。hideへの愛とリスペクトをたっぷり感じるMUCCのステージに、このイベントが開催される意味と意義を早くも感じた。
MUCC
この日、MCとして進行を務めていたのは、hideが96年に立ち上げたLEMONedレーベルに所属していたCUTT(SPEED OF LIGHTS)。幕間に登場し、イベントの諸注意とともにhideの思い出を語ると、hide「LEMONed I Scream」のカバーを弾き語りで披露。想いを込めて熱唱したCUTTの紹介で登場したのは、hideがLEMONedレーベルを立ち上げるキッカケとなった、レーベルメイトでもあるZEPPET STORE。
CUTT
ステージに登場した木村世治(Vo&Gt)が天を仰ぎ、1曲目に始まったのはhide「GOOD BYE」のカバー。13年リリース『hide TRIBUTE VII-Rock SPIRITS-』でもカバーしており、原曲ではYANA(Dr)がドラムを叩いているという、バンドにとっても思い出深いこの曲。気持ちいっぱいに歌い上げる歌声と壮大な演奏は、高く澄んだ空の向こうまできっと届いたはず。続いて、hideも愛した「FLAKE」で会場を沸かすと、「今日は素敵な先輩、仲間たちとこのステージに立てて光栄です」と木村がこのステージに立つ喜びを語る。会場中が手拍子を合わせた「PARANOID」で始まった後半戦では、現在のZEPPET STOREを明示するポップさとヘヴィさを兼ね備えた歌と貫禄のステージで、オーディエンスを圧倒した。
ZEPPET STORE
「Sink The God」で幕を開け、前のめりなほどの攻撃的な歌と演奏で暑い会場をさらに熱くさせたのはOBLIVION DUST。バンドスタート時、Zilch時代のhide(96年頃)にお世話になっていたという彼ら。「hideのおかげで色んなバンドやカラフルなみんなと時間が過ごせるのは本当に嬉しいです。初めてやる曲ですが、みんな知ってると思います」とKEN LLOYD(Vo)が語り、重厚なサウンドで始まったZilch「Electric Cucumber」のカバーに大きな歓声と拳が上がる! 続いて「Desighner Fetus」で会場をぶち上げると、もはや彼らの独壇場。グルーヴィーかつ凶暴なサウンドにKENが吠え、K.A.Z(Gt)が花道を駆け回るアグレッシブなステージで最高潮の盛り上がりを生んだ。
OBLIVION DUST
SEから、「Harlem Queen Complex」、「Harlem Queen Romance」と続く、最新アルバム『J'aime La Vie』の流れでライブをスタート。バンドの最新型を見せつけたのは、D’ERLANGER。「相変わらず、やきもち焼きたくなるくらい愛されてるね。今日はやきもち焼かせてやろうと思って来ました。焦れったくなるくらい高い所まで届けましょう」と、hideの盟友であるKyo(Vo)が笑顔を見せると、「SADISTIC EMOTION」で会場を大きく揺らす。「もうちょっとキミたちの熱さを求めてもいいでしょうか? 限界を破裂してさ、でっかいところまで連れていくから! バライロノセカイへ!」と思わせぶりなMCで始まったのは、hide with Spread Beaver「ever free」のカバー。Kyoの扇動に会場中の手が上がり、大合唱が起きたサビの一体感はやきもち焼くほどの愛に溢れていた。
D’ERLANGER
SE「THEME OF B-T」と地鳴りのような歓声に迎えられ、ステージにメンバーが並んだ瞬間、会場の空気を変えたのはBUCK-TICK。hide「DOUBT」のカバーである「DOUBT'99」でライブをスタートし、オーディエンスを驚かせる。同時代を戦って来た戦友であるhideの楽曲に強い敬愛の気持ちを持って、独自の色に染め上げて演奏する彼らの男気に胸を打たれてると、不穏なサイレン音で始まる「ICONOCLASM」で、美しき漆黒の世界へ引きずり込まれる。激しくクールにストイックに、新旧織り交ぜたセットリストで独自の世界観を構築していくBUCK-TICK。MCでは「今日このステージに立てるのはhideくんのおかげなので、感謝したいと思います」と櫻井敦司(Vo)が言葉少なに感謝を告げると、<LOVE AND DEATH 愛と死 忘れないさ>と、「Memento mori」を力強く歌い上げる。多くを語らず、あくまでも音楽を通じてhideへの想いを伝えるBUCK-TICKのステージは、見る者の心を強く震わせた。
BUCK-TICK
会場に涼しい海風が吹き込んできた頃。hide with Spread Beaverのステージを待つオーディエンスの前にスクリーンで登場したのは、YOSHIKI。映像でのコメント出演となったYOSHIKIは、「こうやってね、20年経っても応援してくれる人がいるのがありがたいな」とファンへの感謝を語る。さらに「気持ちの中ではいつもhideと演奏してるし、なにか達成した後に、「hideどう?」って聞いてるんだけど。「まだまだだよ」って言われてる気もするし。hideのスピリッツを僕も受け継がせてもらって、頑張ってます」とhideへの想いを告げると、「みんなの心の中では生きてるんで。もっと頑張って、hideを驚かせてあげようよ」と、ファンへのメッセージを届ける。最後の「X JAPANはTOSHl、PATA、HEATH、SUGIZO、そしてHIDE、TAIJIと7人で頑張って行くんで。これからもよろしくお願いします」の言葉は変わること無い仲間との絆や結束を感じたし、ファンにとってはすごく嬉しい言葉だったことだろう。
お台場を暑く明るく照らしていた太陽が落ちる頃、いよいよ初日のトリを飾るhide with Spread Beaverのステージが始まる。ステージ上方のパネルが上がり、スクリーンが姿を現すと、「A STORY」をBGMにhideのメモリアル映像が流れる。在りし日のhideの姿に「hide~~!」と悲痛な声が響く中、ステージ中央に置かれた、hideのイエローハート・ギターにスポットが当たると、SE「Spread Beaver」でSpread Beaverのメンバーがステージに登場する。JOE(Dr)のカウントで始まった1曲目は「ROCKET DIVE」。hideの登場を待ち望んでいたオーディエンスが、スクリーンの中でイキイキと歌うhideに手を挙げ、共に歌い、会場が一気にヒートアップしていく。
hide with Spread Beaver
「DICE」、「SCANNER」と続き、Spread Beaverのアグレッシブな演奏とhideのボーカルやパフォーマンスがあまりに自然にシンクロするのを見ていると、hideがステージにいると何度も錯覚し、何度もステージを見て確認してしまったのだが。MCでオーディエンスを煽るhideが「ギター、石塚智昭!」と呼び込み、ステージ上にサポートギターのPATA(Gt)が登場すると、自分が夢の中にいるような不思議な感覚にもなってくる。すっかり陽も落ち、ライティングが美しく映えるステージで、PATAを加えての「CELEBRATION」はバンドサウンドにさらなる深みと広がりを与え、「FLAME」の温かみある歌と演奏に会場中が酔いしれていた。
hide with Spread Beaver
「ピンクスパイダー」、「DOUBT」と続き、DIE(Key)の美しいピアノで始まった「POSE」では重厚なビートと轟音の中、スクリーンの中でシャウトするhideがステージを駆け回り、「MISERY」では曲を支えるバンドアンサンブルに、いたずらな顔をしたhideのギターが重なる。演奏とグルーヴする映像を見て、再び不思議な気分になっていると「私には分かる、まだお客さんたち遊び足りないあるよ」とhideが語りかけ、「OBLAAT」が始まる。スクリーンにステージを跳ね回るhideのやんちゃな姿が映ると、ステージ上では負けじとメンバーがはしゃぎまくり、オーディエンスの頭上にはバルーンが跳ね回る。笑顔に溢れた会場は、すっかり遊び場と化していた。
hide with Spread Beaver
KIYOSHI(Gt)がメンバー紹介し、「お台場まだ行けるよな!? hide、行くぞ!」と開放感のある「ever free」で盛り上がると、いよいよクライマックス。「お前ら、明日も待ってるからよ! hide、ラストソング行くぜ!!」とCHIROLYNがhideに語りかけると、スクリーンのhideが「ありがとう。じゃ、最後の曲です」と曲紹介して「TELL ME」が始まる。スクリーンの中から、優しくもどこか切ない声で歌いかけるhide。最後に光の中に消えていくhideの姿を見て、ライブ中、何度となくステージにhideがいた気がしたけれど、本当にいたんだろうと確信した。また明日、この場所でhideに会えるのが本当に嬉しかった。
hide with Spread Beaver
TEXT/フジジュン
PHOTO/緒車寿一、田中和子
SE
ホムラウタ
M1
蘭鋳
M2
ファズ
M3
KILLER
M4
TIMER
M5
SCARS
M6
ハイデ
M7
TONIGHT
SE
M1
GOOD BYE
M2
FLAKE
M3
NOTHING
MC
M4
PARANOID
M5
NANCY
M6
THE GAME
SE
M1
Sink The God
M2
In Motion
M3
Electric Cucumber
M4
Designer Fetus
M5
You
M6
Death Surf
M7
Haze
M8
Nightcrawler
SE
M1
Harlem Queen Complex
M2
Harlem Queen Romance
M3
SADISTIC EMOTION
M4
LULLABY
M5
CRAZY4YOU
M6
everfree
M7
BABY
SE
THEME OF B-T
M1
DOUBT'99
M2
ICONOCLASM
M3
GUSTAVE
M4
薔薇色十字団
- Rosen Kreuzer -
M5
IGNITER
M6
BABEL
M7
Moon さよならを教えて
M8
Memento mori
M9
無題
映像
A STORY
SE
Spread Beaver
M1
ROCKET DIVE
M2
DICE
M3
SCANNER
MC (hide)~PATA登場
M4
CELEBRATION
MC (CHIROLYN)
M5
FLAME
M6
ピンクスパイダー
M7
DOUBT
M8
POSE
M9
MISERY
MC (hide)
M10
OBLAAT
MC (KIYOSHI)
M11
everfree
MC (CHIROLYN)
M12
TELL ME
SE
JUNK STORY
HURRY GO ROUND